ポジターノとポンジー

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ポジターノは、イタリアの地名ですよね。ごく大まかに言って、ナポリの近くに位置しています。
カプリ島に向かって細く突き出した岬の辺りの町です。アマルフィとはほんの目と鼻の先にあります。
ポジターノが出てくる短篇に、『洗濯盥』があります。イギリスの作家、モオムが1920年代に発表した物語。今は、モオムの短篇集『コスモナポリタンズ』に収められています。
1920年代はじめ、アメリカの雑誌『コスモナポリタン』の編集長に、レイ・ロングという人物がいましてね。このレイ・ロングがモオム先生に連載をお願いしたことがあります。その条件が、「ジャンプなし」だったのです。
外国の雑誌には、「ジャンプ」が珍しくありません。ことに小説などは。最初、読みはじめるのは前の方の頁で、やがて途中から後ろの方の頁に、飛ぶ。これを「ジャンプ」と呼ぶんだそうですね。
19 24年。レイ・ロングはモオム先生に「ジャンプ」なしで、連載を。その結果、短い短篇が完成したのです。日本なら、「掌編小説」と称される長さでしょうか。
これが、好評。事実、読んでみると、感嘆させられるばかり。
さて、その『洗濯盥』の中に、こんな一節が出てきます。

「………そこに行けば、こう廊の下でアンチョビやハム、マカロニやとりたてのボラで食事したり、冷たいブドウ酒を飲んだリすることもできる。」

これはポジターノの居酒屋での話として。この居酒屋の名前は、「マリーナ」と紹介されているのですが。
また、『洗濯盥』には、こんな描写も出てきます。

「いかにも小ざっぱりとした、粋といってもいいくらいのクリーム色を帯びた絹の背広を着ていたが、帽子はかぶっていなかった。」

これはたまたまポジターノのホテルで相客となったアメリカ人の着こなしについて。
「クリーム色の絹の背広」。私の勝手な想像ですが、「ポンジー」 pongee ではなかったでしょうか。
ポンジーはもともと野蚕糸で織られる絹地。微かなむら糸が特徴のものです。多くは無染色なので、淡いベージュにも見える絹地。
どなたかポンジーのサマー・スーツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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