エア・メイルとエンブロイダリイ

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エア・メイルは、国際航空便のことですよね。飛行機が運んでくれる郵便物のことであります。
とにかく飛行機のことですから、軽ければ軽いほどよろしい。で、ごく薄い紙が用いられるわけです。しかも、封筒も便箋もなくて。封筒すなわち便箋。薄紙に直接書いて、それをあんじょう畳むと、一通の手紙に仕上がるわけですね。
どこのどなたかが考えたのでしょう。世の中、頭のいいお方がいらっしゃるものですね。
エア・メイルが出てくる小説に、『アメリカひじき』があります。野坂昭如が昭和四十三年に発表した短篇。この『アメリカひじき』の前篇とも言えるのが、『火垂るの墓』
事実、野坂昭如の「直木賞」受賞は、『火垂るの墓』と『アメリカひじき』とが対象になっています。「直木賞」はともかく、戦中戦後の日本の世相を美事に描いた小説としては、この二作は忘れてはならないでしょう。
また、野坂昭如の代表作でもあります。私の勝手な想像ではありますが。野坂昭如独特の文体は、西鶴の影響が透けて見えます。
というよりも井原西鶴の霊が、野坂昭如にのり移って、小説を書かせたものでしょう。

「………エアメールの、赤白紺のだんだらにかこまれた封筒をひらひらさせながら京子は………」

この「エアメール」は、たしか二度ほど出てくるのですが。このエア・メイルが物語の発端となっています

「………焼跡に降った夏の雪、つややかなギャバジンに包まれもり上がったヒップ………」

『アメリカひじき』には、そんな文章も出てきます。もちろんGI達の様子として。
ここから、戦後の日本にギャバジンが流行することになるのですが。

エア・メイルが出てくる小説に、『密林の夢』があります。2011年に、アン・パチェットが発表した長篇。

「航空書簡とは、明るい青のエアメール用の一枚の紙で便箋の用をなし、折りたたんで縁を糊付けすればそのまま封筒にもなる、というものだ。」

また、『密林の夢』には、こんな描写も出てきます。

「前見頃に刺繍の入った白い麻のシャツは、サーファーの正装なのかもしれない。」

これはホテルのロビイで見た若者の服装について。
「刺繍」。どんな図柄のエンブロイダリイだったのでしょうか。
どなたか胸にエンブロイダリイのある麻シャツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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