カメオとカラア

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カメオは、浮彫りのことですよね。浮彫りの彫刻。主にブローチなどの女性用のアクセサリイに用いられる手法。
貝の表面などに、模様を浮かびあがらせる装飾品のことであります。「カメオ」cameo は、古いイタリア語の「カメオ」cammeo から来ているんだとか。
カメオは起源前四世紀に遡る技法だと考えられています。古代エジプトにはじまり、古代ギリシア、古代ロオマを経て、多くイタリアに受け継がれたという。
クラシックといえばそれまでのことではありますが。十九世紀末の英国貴婦人は、ハイ・カラアのブラウスの頸もとに、よくカメオのブローチをあしらったものです。

カメオが出てくる紀行文に、『旅日記から』があります。大正十年に、寺田寅彦が発表した『日記』であります。

「古めかしい油絵の額や、カメオや七宝の装飾品が目についた。双眼鏡の四十志というのをT氏が十志につけたら負けてよこした。」

これは1920年5月2『日記』。「T氏」案内人。これはイタリア、ナポリの港でのこと。寺田寅彦は船でイタリアを旅しているので。ナポリからは、ポンペイに。
寺田寅彦は、ミラノに行く前、ゲノアに。一泊。「オテル・ロイヤル」に。泊まっています。5月3日の日に。

「デセールの干葡萄や干無花果や蜜柑などを、本場だから沢山食えと云ってハース氏がすすめた。」

ここでの「ハース氏」もまた、ガイド役。

カメオが出てくる小説に、『狭き門』があります。フランスの作家、ジイドが、1909年に発表した物語。

「彼は袋からネクタイを取り出して目の前に置き、カメオのピンを、それからスカーフをはずした。」

1900年代のフランスには、カメオのネクタイ・ピンもあったのでしょう。
また、『狭き門』には、こんな描写も出てきます。

「前のほうがV字型に切りこまれ、先端の折れ曲がった中高のカラーに包まれた首筋は、がっしりしていた。」

これは「アンチーム」という人物の着こなしについて。たぶんウイング・カラアのことかと思われるのですが。
ここでの「中高」でも、今から見れば、かなりのハイ・カラアではあったでしょうが。
どなたかハイ・カラアのシャツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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