とんぼとドイツ帽

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とんぼは、昆虫のひとつですよね。「竹とんぼ」なんていうではありませんか。
青竹を細く、薄く削って、手回すと、空高く飛んでくれるものです。あの竹とんぼを作るのに使ったのが、「肥後守」ひとつ。折り畳式の簡便な小刀でありました。
そしてとんぼ取りに使ったのが、細竹。細竹の先に「取りもち」を塗りつけて。取りもちは糊に似た何かで、これにとんぼがくっついてくれたわけです。
あと、とんぼ取りに必要なのは、麦藁帽子。毎日、真っ黒になってとんぼを追いかけていました。

とんぼ釣り けふはどこまで 行ったやら

加賀の千代女の句に、そんなのがあったような記憶があるのですが。
とんぼを漢字で書くと、「蜻蛉」。これで「せいれい」とも訓みます。とんぼで、おしゃれでと申しますと、「あきつ」。あきつはとんぼの古語。古代の日本では、「あきつ」と言ったんだそうですね。

とんぼが出てくる手紙に、寺田寅彦の書簡があります。今は、寺田寅彦の『書簡集』に収められているのですが。

「衣装の美しいとトンボ返りの上手なのには驚いた。」

明治四十二年四月三日の手紙。宛先は、「寺田寛子様」になっています。場所は、上海。船の上での、余興を観ての感想として。
寺田寅彦の『書簡集』を眺めておりますと、こんな文章も出てきます。

「男の帽子は黒の山高帽(土佐でいふドイツ帽)が一番おおく中折帽や麦藁帽などは少なく候。」

これはベルリンから、「寺田利正」宛の手紙。六月五日の消印になっています。
明治末期の高知に、「ドイツ帽子」の言い方があったのでしょう。
どなたか明治のドイツ帽子を復活させて頂けませんでしょうか。

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