ダージリンは、インドの地名ですよね。そしてまた、紅茶の種類でもあります。インドのダージリンに産するので、「ダージリン」。オレンジ色に輝く水色の美しい茶葉です。
ダージリンの名物は、霧。この霧がダージリンの茶葉を美味しくしてくれるんだそうですが。要するに、標高が高いので、一日のなかでの寒暖の差が激しいのでしょう。
「中国のキーマン」。「インドのダージリン」。そして「スリランカのウバ」。これが世界の三大紅茶とされるんだそうです。
昭和四十七年にダージリンを訪れた作家に、井上 靖がいます。
「ダージリンは、東はブータン、西はネパールに挟まれた地区にあって、チベットの国境に近い山の町である。」
井上 靖は、随筆『ダージリン』の中で、そのように書いています。
また、井上 靖は霧のせいなのか、いくらブランデーを飲んでも酔うことがなかったとも書いています。
明治三十年にダージリンを訪れたお方に、河口慧海がいます。
「チベット入りを考えた慧海は、まずインドの山岳避暑地ダージリンにS・C・ダールというチベット学者を訪ね、その後援のもとに、チベット語を勉強した。」
奥山直司編『河口慧海日記』に、そのように出ています。
河口慧海はなんとしても仏教を学びたいと考えて。そのためにはチベットにいかなくてはならない。そのためにはチベット語を学ばなくてはならない。ざっとそんな順序だったのでしょう。
ダージリンが出てくるミステリに、黒い瞳のブロンド』があります。2014年に、アイルランド出身の作家、ベンジャミン・ブラックが発表した「マーロウ物」。
「ダージリンでけっこうです」と私は答えた。
ここでの「私」が、フィリップ・マーロウであるのは、言うまでもないでしょう。
また、『黒い瞳のブロンド』には、こんな描写も出てきます。
「………ハイウエストの白いスラックスに飾り房のついたローファーを履き………」
これは「フロイド・ハンセン」の着こなし。
たぶん、タッセルド・スリップオンのことかと思われるのですが。
『黒い瞳のブロンド』の時代背景は、1930年代末におかれています。
どなたか1930年代のタッセルド・スリップオンを復活させて頂けませんでしょうか。