味噌汁と三つボタン

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味噌汁は、純和風スープですよね。日本人は味噌汁が好き。いや、味噌汁が好きなら純日本人と言って良いでしょう。
朝は味噌汁と決めているお方もいらっしゃるでしょう。第一、味噌汁の幅は広いですからね。
まず、出汁をどうやってとるのか。議論百出でありましょう。次に、味噌はどれを使うのか。赤味噌、白味噌。仙台味噌、信州味噌。
さらには、具には何を選ぶのか。アゲ、豆腐、山菜………。
その結果、一年三百六十五日、味噌汁でもまったく問題ないのであります。

味噌汁を堪能したお方に、永井荷風がいます。

「………宿屋の朝飯、鶏卵、球葱味噌汁、はや小魚つけ焼、茄子香の物なり、これも今の世にては八百膳の料理を食するが如き心地なり………」

永井荷風の『断腸亭日乗』の、昭和二十年八月十五日のところに、そのように書いています。ちょうど敗戦の日ですね。
永井荷風はこの朝食の後、岡山から、東京に向かっています。荷風は難を逃れて田舎に疎開していたのです。
このとき、荷風の世話をしたのが、谷崎潤一郎。荷風の日記に、「谷崎氏」とよく出てくるのは、そのためなのですね。

「秋分、晴、洋服を注文す、洋服屋老人なり」

昭和二十一年九月二十四日の『日記』に、そのように出ています。
ところが。同じ日の、従兄弟の五叟の日記によりますと。

「先生三ツボタンにせよとか………」

注文があったんだそうですね。昭和二十一年の荷風は三つボタンの上着がお好きだった。これは間違いないでしょう。
スリーボタンは、スーツの基本です。
どなたか三つボタンのスーツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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