アップルパイとアニャラン

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アップルパイは、林檎の菓子ですよね。丸くて大きな菓子。切ると中に甘く煮た林檎が詰まっていて、美味しいものです。
シナモンの味が効いていたりして。第一、身体にも良さそうではありませんか。「林檎が赤くなると、医者が青くなる」。そんな言葉もありますし。

「それに、今のアップルパイで思い出したけど、松村もお前と同じくアップルパイが好きなんだ、濃いお茶で。」

昭和四年に、尾崎 翠が発表した小説『アップルパイの午後』に、そんな一節が出てきます。これは妹に対する兄の言葉として。
「濃いお茶」。日本茶なのか、紅茶なのか。たしかにアップルパイを食べる時には、「濃いお茶」が欲しくなるものですね。

「チーズに牛肉にコーヒーにチョコレートにアップルパイにウィスキーかなんかがないと………」

昭和二十三年に、坂口安吾が発表した小説『青鬼の褌を洗う女』に、そのような文章が出てきます。
ここだけを読むと、坂口安吾はアップルパイでウイスキイを飲んだのではないかと、思ってしまうのですが。

アップルパイが出てくる物語に、『移動祝祭日』があります。1946年に、ヘミングウェイが発表した小説。ただし、話の背景は1920年代の巴里になっているのですが。

「小さな大根と、子牛の肝にマッシュポテト、それにオランダぢしゃのサラダ。アップルパイ」

これはランチに。何を食べるのかの相談として。ヘミングウェイもまた、アップルパイがお好きだったのでしょう。
また、『移動祝祭日』には、こんな描写も出てきます。

「か彼女がグレイの小羊の毛皮のジャケツをほしがったとき、私はばかに頑固だったが、いったん彼女がそれを買うと、気に入ってしまった。」

「小羊の毛皮」。いいですねえ。フランスなら、「アニョラン」agnelin でしょうか。
どなたかアニョランの上着を仕立てて頂けませんでしょうか。

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