明治とメルトン

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明治は、日本の年号ですね。明治時代。江戸から、明治になったのは、言うまでもないでしょう。

降る雪や 明治は遠くに なりにけり

中村草田男の名句にそんなのがあります。明治は、昭和から眺めても遠いのですから、今ならもっと遥かな時代なのでしょうか。
でも、今でも「明治温泉」があります。「明治学院大学」もあります。「明治神宮」もあります。
明治神宮は、明治天皇をお祀りしているので、「明治神宮」。
明治神宮の鳥居をくぐって、白い玉砂利を踏むと、宗教に関係なく、誰しも敬虔な気持が湧いてくるものです。
明治神宮は、ざっと70万平方メートルの広さがあって。12万本の樹木が植えられているんだとか。これはすべて当時の奉仕によって、植樹されたと伝えられています。

明治の様子を識るには、『明治百話』があります。昭和六年に、篠田鉱造が発表した記録文です。
篠田鉱造は明治に生きたお方ですから、聞き書きが中心になっています。それで、中身が活き活きしているのでしょう。

「………親子連で見物に往き、その帰る時、「三茂で牛肉を喰って行こう」とあって、同店に登り、初めて牛鍋をパクついたものです。」

これは明治九年頃の話として。その年、日本橋で火事があって、それを観に行って。その帰り、新橋の「三茂」という牛肉店に寄った。それが篠田鉱造にとってのはじめての「牛肉鍋」だったと、書いています。三茂と書いて「さんも」のルビをふっているのですが。

「西洋小間物店はソノ名の如く洋品を扱っていますので、明治二十三年頃から、七、八年へかけて流行ったものです。」

これは銀座が「煉瓦」と呼ばれていた時代の話なのですが。

明治が出てくる小説に、『友田と松永の話』があります。谷崎潤一郎が、大正十五年に発表した物語。

「さうさ、酉年の三十六さ。明治十八年の生まれだ。」

これは「友田」の話として。実際の谷崎潤一郎は、明治十九年の生まれなんですが。

谷崎潤一郎が、大正十四年に発表した短篇に、『赤い屋根』があります。この中に。

「………メルトンのヅボンの下にそれとハツキリ見分けられる臀。」

これは「寺本」という男のトラウザーズ。
メルトン melton は、厚く、丈夫なウール生地。英国の狩猟場、メルトン・モーブレイに因んだ生地です。
どなたかメルトンのスーツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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