湖と燕尾服

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湖はむかし、「水海」とも言ったんだそうですね。湖はなぜか、幻想的で。「霧の摩周湖」だとか。
パリの真ん中に湖があって。これはほんとうなんでしょうか。パリ、オペラ座の地底に。パリ九区、オペラ広場に、オペラ座が。あのオペラ座は、ナポレオン三世の命で建てられたんだそうですね。工事がはじまったのが、1862年のこと。
ただ、オペラ座の工事は、難工につぐ難工。地下水との戦いもあったりして。とにかくナポレオン三世の意向なんですから、なんとしても。多くの紆余曲折の末に。1875年1月25日に完成。
オペラ座の設計は、シャルル・ガルニエ。それがために、ガルニエ王宮とも呼ばれるんだそうですが。
オペラ座工事をはじめて分かったことは、地下に水脈が走っていた。でも、場所を変えることもできない。そのために、この上なく複雑な構造になっているという。湖をはじめとする小宇宙の上に成り立っている。そう言っても、過言ではないでしょう。当然、怪人の一人や二人、住めるのも当然なんでしょうね。
だからこそ、『オペラ座の怪人』が生まれることになったのです。もちろん、ガストン・ルルーの。1909年の発表。ガストン・ルルーは物語のはじめに、こんな風に書いています。

「( オペラ座の怪人 ) は、実在した。」

このことによって、当時すでに怪人の「噂」があったのは、ほんとうなんでしょうね。
『オペラ座の怪人』の時代背景は、十九世紀末。夜になると紳士たちは皆、燕尾服に着替えた時代であります。燕尾服はフランスで、「アビ」 habit 。
「アビ」は「服」のこと、また「正装」の意味でもあります。アビには「ホワイト・タイ」を結ぶことになっています。
一度、燕尾服を着て。オペラ座の湖を眺めに行きたいものですね。

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