モスクワはロシアの都市ですよね。ヨーロッパ最大の都市といわれたりもするんだそうですが。
1961年にモスクワを旅した日本人に、大宅壮一がいます。その旅の記録は、『世界の裏街道を行く』に収められています。
大宅壮一は、1961年4月26日。羽田空港を発っています。大宅壮一はモスクワでは、「北京飯店」というホテルに泊まっています。大宅壮一は「北京飯店」の名前からの連想で、夕食には中華料理を選んだ。が、およそ中華料理とは思えない皿が並んで、驚いたことなども出ています。もっとも今から五十年以上も前の話ではありますが。
また大宅壮一は、1961年のモスクワには、一本のコカコーラのないと、書いています。では、何を飲むのか。「ナルザン」。これはロシアのミネラルウォーターで、一本が3コペクくらい。当時の日本円換算で、12円ほど。
ナルザンのほかには、「クワス」。
「別にクワスといって、ビールとアメ湯のアイノコみたいな、ソ連独特ののみものがひろく愛用されている。」
クワスは、ライ麦を原料とする清涼飲料水。見た感じはビールそっくり。2%前後のアルコール分もあるらしい。ただ、モスクワでは純然たる清涼飲料水と考えられているようですが。
モスクワが出てくるミステリに、『ロシア・ハウス』があります。ジョン・ル・カレが、1989年に発表した物語。
「夏は長すぎるショートパンツでモスクワの森をトレッキングとしゃれ、冬はクロスカントリーたのしむ。」
これは英国情報部員の、パディという人物の余暇の過ごし方なんですね。また、『ロシア・ハウス』には、こんな描写も出てきます。
「フェア・アイル編みの袖なしのプルオーバー、幅広のズボン、モカシン・シューズ。」
これは、ウィルトンという人物の着こなし。五十七歳の「永遠の学生」と形容される人物。うーん、モカシンを履いていると、「永遠の学生」になれるのでしょうか。
まあ。モカシンを履いてモスクワに旅する夢でも見るといたしましょうか。