船旅とフロック・コート

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船旅は、優雅なものですよね。まず第一に、手荷物の制限がほとんど、ない。それにひとたび船に乗ったなら、誰にも邪魔されない。海と風と自由に包まれての日々が約束されるわけです。
船旅がお好きだったお方に、阿川弘之がいます。阿川弘之はなにも船だけでなく、動く乗り物ぜんぶお好きだった。でも、中でも船が。
阿川弘之はある時、東京から名古屋まで船で。三千トンの千歳丸に乗って、二十六時間。
名古屋に着いた阿川弘之、東京への帰りも、船に乗りたいと。で、名古屋から東京への室蘭丸を予約。
ところが室蘭丸から名古屋の阿川弘之に緊急で。電話があって。
「出航の予定が早まったので、今すぐ大阪港に来られたし………」。
阿川弘之は急ぎ、名古屋から大阪港に駆けつけたという。
やはり船旅がお好きだったらしいお方に、大宅壮一が。大宅壮一は、昭和二十九年にほぼ世界一周ともいえる旅をしています。この時、オランダのハーグからイギリスに行くのに、飛行機ではなく船を使っています。
ハーグから英国の港までは、「七ギルダー半」の運賃だったと書いています。大宅壮一著『世界の裏街道を行く』に、そのように出ています。
夜の十時にハーグで乗って。早朝、英国の港に着いています。七時の列車で、ロンドンへ。「一等車はガラあきである。」 そんな風にも出ています。
大宅壮一はロンドンのシティーも訪れています。そして、その印象を。

「ロンドンのシティーには銀行、取引所、大会社などが多く、守衛や門番もフロック・コートをきている。」

フロック・コートは、英国伝統の服装。やや軽快な、二十一世紀にふさわしいフロック・コートがあっても良いのではないでしょうか。
飛行機の時代にも、船旅の快適さがあるように。

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