ボートは、舟のことですよね。ボートを漕ぐ競技のことを、ボート・レイスというではありませんか。
おしゃれ用語にもボートはあって、「ボート・ネック」。ボートの舟底のようにえぐられた頸元なので、「ボート・ネック」。時折、スェーターのデザインに見られることがあります。
ボートが題につく小説で、必読書となれば、『ボートの三人男』でしょうね。1889年に、英國の作家、ジェローム・K・ジェロームが発表した物語。
『ボートの三人男』は、1889年に刊行されて、拍手喝采。今なお売れ続けている不思議な小説であります。文字通り、三人の男が、テムズ河でボート遊びする内容の、ユウモア小説。
では、ジェローム・K・ジェロームは、どうして『ボートの三人男』を書いたのか。ジェローム・K・ジェロームは、1888年に結婚したから。
ここで蛇足をつけ加えておきますと。ジェローム・クラプク・ジェロームは、本名。また、お父さんの名前も、ジェローム・クラプク・ジェロームだったという。
1888年に、ジョージナ・マリスと、ジェロームは、結婚。その新婚旅行に、テムズ河に。ボートで。なぜなら、ジェロームはテムズ河でのボート遊びが大好きだったから。
それで、ジェロームは新婚旅行から帰って、すぐに『ボートの三人男』を書きはじめたのです。
この『ボートの三人男』が出てくるミステリに、『とりちがえた問題』があります。ディクスン・カーが、1947年に発表した物語。
「右手を床まで垂らし、指がジェロームの小説『ボートの三人男』の頁にはさまっているのです。」
これは、レッシング博士のベッドでの様子。
また、『とりちがえた問題』には、こんな描写も。
「赤と白との段だら縞のブレザー・コートに、当時ボート帽と呼ばれていた麦藁帽をかぶっていたのです。」
これは、ジュニアと呼ばれる青年の着こなし。
たぶん、「ボーター 」b o at er のことでしょうね。たしかに麦藁帽なのですが、堅く固めてあるために、河で風に飛ばされても、拾いに行くまで、浮かんでいてくれる帽子なのですね。