シェーファーは、万年筆の銘柄ですよね。シェーファーは、1907年のはじまりなんだとか。
アメリカ、アイオワ州の、ウォルター・A・シェーファーが、考案したので、「シェーファー」 Sh e aff er 。
ウォルター・A・シェーファーは、当時、宝石店の店主。もっと使いやすい万年筆があったらなあ、と。その時代の万年筆はインクの注入が面倒だった。軸を外して、スポイトを使って、インクを移し入れる方式。
ウォルター・A・シェーファーが考えたのは、インクの管を軸に内蔵する方法。軸の外に取り付けた、レヴァーを上下させることで、梃子の力で、インクを吸い込ませるように。これでまた一歩、万年筆が使いやすくなったわけですね。
日本の作家では、夏目漱石が比較的はやい万年筆の愛用者だったらしい。万年筆以前には、もちろん墨を擦って、筆で和紙に原稿を書いたものです。
これはその頃、「丸善」に内田魯庵が勤めていて、魯庵が漱石に万年筆を薦めたらしい。その中のひとつに「オノト」があったという。
明治の時代には萬年筆を、「まんねんふで」と訓んだ。大正期になって、だんだんと「まんねんひつ」の訓み方になったんだそうですね。「まんねんふで」は、明治語といってよいのかも知れません。
万年筆が出てくるミステリに、『ダブル・ダブル』があります。1950年に、エラリー・クイーンが発表した物語。
「博士は古い万年筆のキャップをはめたりはずしたりしながら…………………。」
これはセバスチャン・ドッド博士の仕種。「街の聖者」と呼ばれる医者という設定になっています。ただし、ドッド博士の万年筆が何の銘柄だったかは出ていないのですが。
『ダブル・ダブル』には、こんな描写も。
「ホルダーフィールド弁護士は、不機嫌らしかった。かもしか革の手袋と、うす茶色の中折帽を暖炉のマントルピースの上に叩きつけるように置くと………………」。
オーティス・ホルダーフィールドは、弁護士という設定。「かもしか革の手袋」を嵌めていたことが分かるでしょう。
ここでの「かもしか革」は、おそらくシャモアのことかと思われます。
シャモア ch am o is は、正しくは「アルプスカモシカ」のこと。日本で、「セーム革」というのと同じです。
シャモアは古い時代から、手袋にふさわしい素材と考えられてきたものです。薄く、なめらかで、伸縮性があるので、手にぴったり。
もちろんシャモアの手袋を嵌めて、万年筆で文字を書くのも、可能でしょうね。