ドイルで、ミステリでといえば、アーサー・コナン・ドイルでしょうね。アーサー・コナン・ドイルは、1930年7月7日に世を去っています。71年の生涯でありました。
2018年7月7日は、ドイル没後、八十ハ年だったことになります。
コナン・ドイルが「探偵小説の中興の祖」であるのは、よく言われるところでしょう。では、なぜドイルは探偵小説を書くことになったのか。
ドイルには時間がたくさんあったから。こう言ったのではあまりに無責任でしょうか。コナン・ドイルは若い頃、捕鯨船に乗り組んでいます。船医として。当時の捕鯨船の船医はそれほど忙しくはなかった。で、ドイルは読書に耽った。たとえば、エドガー・アラン・ポオだとか、エミール・ガボリヨだとか。 エミール・ガボリヨはフランス人。やはり探偵小説を書いた作家であります。
ドイル自身は純文学を書こうとは思ってた。でも、読むものは多く初期の探偵小説を。そこでつい、編集者に読ませるために探偵小説を書いてしまった。これがやや本当に近いのかも知れません。
フランスの、モオリス・ルブランもまた、これに似ています。モオリス・ルブランも、純文学の作家。ところが友人の編集者に薦められて、娯楽小説を書くことに。それが『ルパンの逮捕』で、たちまち拍手喝采。一作だけのつもりが、連作となったものです。
モオリス・ルブランの短篇に、『セル二ーヌ公爵の工作』があります。この書きはじめに。
「腰まわりのぴったりしたグレーのフロックをきちんと着こなし、白雲斎のチョッキを小粋にのぞかせている。」
もちろん、セル二ーヌ公爵の様子なのです。では、「白雲斎」とは。これは雲斎織のことです。白い雲斎織。英語では「ドリル」 drill がそれにあたります。ドリルは、綾織に、丈夫な生地。足袋の底地にも雲斎織はよく使われるものです。一説に、「雲斎」が考案したとのこと。
ドリルは、広く、綾織のコットンと考えてもよいでしょう。なにかダーク・スーツに、ホワイト・ドリルのウエイストコートを合わせてみたいものですね。