イラディエルという名前があるんだそうですね。たとえば、セバスティアン・イラディエル。
セバスティアン・イラディエルは、『ラ・パロマ』作曲したお方なんですね。1860年頃の作曲だろうと、考えられています。『ラ・パロマ』には、いろんな編曲があって、いろんな歌手に歌われています。1974年には映画『ラ・パロマ』さえ作られています。
「ラ・パロマ」はスペイン語で、「鳩」。白鳩は、平和の象徴だと考えられています。晩年のピカソは自宅に何羽もの鳩を飼ってもいました。鳩の絵も多く描いています。お嬢さんの名前にも。もちろん、パロマ・ピカソのことですね。
セバスティアン・イラディエルは、1809年1月20日、バスクのアラバに生まれています。バスクというと、まんざらピカソとも無関係ではない、ということにもなります。
歌の『ラ・パロマ』が出てくるミステリに、『ガネットの銃』があります。『ガネットの銃』は、トマス・ウォルシュが、1933年に発表した物語。
「ガネットは物思いに沈んだ顔で唇をへの字に引き結び、口笛で『ラ・パロマ』を吹いた。クローゼットにはスーツが四着、きちんととハンガーに吊るしてある。」
「ガネット」は刑事という設定。事件との関係で、ある男の部屋を捜査している場面。そこにある男が入ってきて。
「男の背中が見えた。上背があり、肩幅が広く、腕が長い。ソファの上に身をかがめている。夜会用の礼服に身を包み、ジャケットから糊のきいた白い襟がのぞいている。」
この「男」は、ジョージ・ブレークという名の、会社の社長。
1930年頃の会社の社長であれば、やはりイヴニング・コートの可能性が高いでしょう。
いつの日にか。イヴニング・コート姿で、『ラ・パロマ』を口遊むようになりたいものですが。