ジンジャーエールは、ジンジャー風味のソーダー水ですよね。さっぱりしていて、飲むとなんだか元気になる感じがあります。
ジンジャーエールが出てくる小説に、『風媒花』があります。武田泰淳の名作。
「老人は焼酎入りの厚手のコップと、ジンジャエールの小壜を手にし………………」。
たぶん、老人は、焼酎を、ジンジャーエールで割って飲んでいるのでしょう。
武田泰淳が、山形の上山温泉に行った時の話を、随筆『出羽三山』に書いています。武田泰淳が、宿の女中さんと話をする。
「アツミキヨシにはびっくりしたわ。テレビの滑稽役とちがって、まじめ紳士だったから……………………。」
渥美 清と仲良しだったのが、黒柳徹子。黒柳徹子は渥美 清のことを、「お兄ちゃん」と呼んで。渥美 清は黒柳徹子のことを、「お嬢さん」。これは最後まで変わることがなかったという。
黒柳徹子はある時、山田洋次のお願いして、「寅さん」の撮影風景を見学に。
「二本が四本、四本が八本………………………」。
寅さんが啖呵売りをしている場面。その日は、ことに名調子だったそうですね。
黒柳徹子と渥美 清の正月の行事は、ふたりで、映画館に「寅さん」を観に行くこと。さすがに映画館の入り口で人に会うと皆笑ったという。でも、「寅さん」を観るには、理想の場面だったでしょうね。
いや、そうではなくて。ジンジャーエールの話をしているんでした。ジンジャーエールが出てくる小説に、『愛慾の離合』があります。1920年代に、池谷信三郎が発表した長篇。
『卓子の上にはジンジヤソーダの黄色い液體が透き通つてゐた。」
これはその時代の「資生堂」での光景。また、『愛慾の離合』には、こんな描写も出てきます。
「薄手のテレクストラの藍の上著に白麻のズボンを穿いてゐる若い男だつた。」
若い男ではありませんが、白麻のトラウザーズで、ジンジャーエールを飲みに行きたいものです。