ソーホーは、ロンドンの地名ですよね。ニュウヨークにも、ソーホーはありますが、ここではロンドンのソーホーを指します。Soho
と書いて、「ソーホー」と訓みます。
無理矢理、日本に置き換えるなら、浅草に似ているでしょうか。少なくともロンドンでエスニック料理のレストランに行きたいと思ったなら、ソーホーを目指すのが、早いでしょう。
ソーホーはもちろん、ロンドンの下町をくまなく歩いたお方に、長谷川如是閑がいます。明治四十三年のことです。その時の紀行文は、『往来から見た倫敦』n収められています。
「紺色のヘルメット形の帽子を被って、単釦の制服を着た巡査の姿がなかったら、倫敦の往来は半ば其の特色を失って仕舞うだろう。」
長谷川如是閑は、当時のロンドンの警察官に注目しています。また、警察官の交通整理にも。警察官が右手や左手を巧みにうごかすと、魔法のように車の流れが整然と変わってゆくことを。
長谷川如是閑は「シングル・ボタン」のことを、「単釦」と書いているのですが。
ソーホーが出てくる物語に、『分身』があります。1967年に、フリオ・ラモン・リベイロが発表した小説。
「………ソーホーのある店の前を通りかかると、ショーウインドーに美しい地球儀が飾ってあったので、さっそく買い込んだ。」
これは物語の主人公の「僕」。僕はその頃、チアリング・クロスのホテルに住んでいたので。
ほぼ同じ頃、フリオ・コルタサルが書いた短篇に、『偏頭痛』があります。『偏頭痛』も、『分身』も同じく、ラテンアメリカ短篇集『遠い女』に収められているのです。
「仕方なくコルク製のヘルメットをかぶって外に飛び出すと………」
「コルク製のヘルメット」は、ソーラ・トーピー sola topi のことかと思われます。熱帯でかぶる防暑帽。
「ソーラ」はムネクサのこと。ムネクサには、髄があって、この髄が断熱材として用いられたので、その名前があります。
どなたか日本向きのソーラ・トーピーを作って頂けませんでしょうか。