ホームズとネクタイ

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ホームズはもちろん、シャーロック・ホームズのことですよね。
シャーロック・ホームズがこの世にはじめて登場するのは、1887年のこと。『緋色の研究』において。原題は、『ア・スターディ・イン・スカーレット』になっています。
コナン・ドイルが『緋色の研究』を完成させたのは、1886年。なかなかそれを掲載してくれる雑誌が見つからなかったから。アメリカの「ビートン」という雑誌に発表されたのは、そんな理由からだったのです。たぶん、コナン・ドイルがその時には、まだ無名作家だったからでしょう。『緋色の研究』は、もちろんコナン・ドイルにとっての第一作。
コナン・ドイルのお父さん、チャールズ・ドイルは絵師でもあって、『緋色の研究』に挿絵を描いたこともあったようです。
その後、ロンドンの『ストランド・マガジン』にホームズ物が掲載されるようになり、シドニー・パジェットの絵が添えられるように。ここから突然の人気で迎えられるようになったのは、ご存じの通り。
『緋色の研究』は日本では、明治三十二年にはじめて翻訳されています。その題は、『血染めの壁』。当時の「毎日新聞」に連載。訳者は、「無名氏」となっているんですが。
ホームズ物は延原 謙をはじめ、多くの作家が翻訳を手がけています。そのおひとりに、阿部知二が。阿部知二は、英文学の研究家でもあり、作家でもあった人物。阿部知二には奇妙な短篇があって、『運命のネクタイ』。奇妙な小説であり、最後に意外な一行が用意されています。その中に。

「かれの胸にだけ、その美しい、「グランディ・チュセラアニ」のネクタイは光っていた。」

たぶんイタリア製の高級ネクタイなんでしょう。この一本のネクタイが、ふたりの男の人生に大きな影響を与える、という物語なんですね。
人生を変えてくれるネクタイをむすんで。ホームズの本を探しに行くとしましょうか。

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