スコーンとスポーラン

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スコーンは、美味しいものですよね。イギリスでの朝食にも出てくることがあります。もう少し気取ったところでは、ハイ・ティーでしょうか。
スコーンはたいてい丸くて、高さがありますので、真ん中あたりから、半分に。半分にしたところに、クリイムなどを添えて、食べる。ただし、スコーンに何を添えるかは、好みの問題ではありましょうが。たとえば、バターとオレンジ・マアマレエドだとか。
今、イギリスでと、申しましたが。もともとはスコットランドでのパンだったそうですね。スコーンが出てくる紀行文に、『スコットランド紀行』があります。1935年に、エドウィン・ミュアが発表した文章です。

「運んでいるのはハム・エッグ、ウェールズの兎、スコーン、ケーキ、フルーツ・サラダ、レモネード、ジンジャー・ビール、アイスクリーム。」

これは、エディンバラでの食事風景。エディンバラですから、スコーンが運ばれるのは、当然でしょう。ところで、「ウェールズの兎」とは何なのか。たぶん「ウエルシュ・ラビット」のことかと思われます。直接には、「ウェールズの兎」。でも、ほんとうはチーズ料理。兎の代りにチーズで代用した料理のこと。
エドウィン・ミュアは、エディンバラから、スコットランド南部へと旅をしています。

「ロブ・ロイのバッグとスポランと太刀と短刀、プリンス・チャーリーの酒杯………………………」。

いろいろと古い時代の遺物をも見学しています。
スポーラン sp orr an は、スコットランドの民族腰鞄。スポーラン にも大きく分けて二種あって、レザー・スポーラン と、ファー・スポーラン 。レザーは日常用。ファーは、礼装用となっています。
古い時代のスコットランドでのスポーラン は、非常食入れで、これで野山を駆け巡ったという。今は、ハンドバッグ代りにも使われています。

「此の木魚の中から、パイプを出す、煙草を出す。さうしてぷかりぷかりと夜長を吹かす。。木魚の名をスポーラン と云ふ。」

夏目漱石は、『永日小品』の中に、そのように書いています。たぶん日本語にあらわれた比較的はやい一例でしょう。
倫敦留学の経験もある夏目漱石は、明治期におそらくスコーンも召し上がっているに違いありません。

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