アワードとアルスター

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone

アワードは、「賞」のことですよね。たとえば、「アカデミー賞」なんていうではありませんか。
誰しも「賞」をもらうのは嬉しいものであります。「賞」は人を褒めることで、褒められて気分を害するお方は、それほど多くないでしょう。
たとえばの一例ではありますが。エリザベス・テイラー。エリザベス・テイラーは子役時代から、その美貌で有名でありました。でも、美貌と演技力とはまた別問題で。
ところが1960年の映画『バタフィールド8』で、アカデミー主演女優賞を。これをきっかけに、エリザベス・テイラーは、演技派でもある美人女優として、成長してゆくわけですね。
アワード、賞、人を褒めることには、そんな効果も期待できるわけです。
アワード aw ard は主に賞を与えることで、一方、受ける側の人を、「アワーディー」
aw ard e e というんだそうですが。
アワードから生まれたミステリに、『死の競歩』があります。1970年に、英国の作家、
ピーター・ラヴゼイが発表した物語。
ピーター・ラヴゼイの『死の競歩』は、英国推理作家協会の、「最優秀新人賞」を受けています。
もともとは1968年のコンテストがきっかけになったもの。イギリスの出版社、マクミラ社と、パンサー社とが共同で、「優勝者には賞金を」といったのであります。賞金は、
一千ポンド。
その結果、締切までに、250篇の力作が寄せられたという。この250篇のミステリの中から選ばれたのが、『死の競歩』だったのです。
作者のピーター・ラヴゼイはそれまで学校の先生だったのですが。このアワードのおかげで、ひとりのミステリ作家が生まれたわけでもあります。やはりアワードの効果は大きいですね。
つまりそんなわけで、『死の競歩』はピーター・ラヴゼイの第一作ということになります。
この『死の競歩』がまた、アワードと無関係でないのも、面白いことでしょうか。
『死の競歩』の時代背景は、十九世紀末、1879年11月におかれているのです。
1879年11月に、イズリントンで行われた「ウォブルズ」が物語の舞台なのであります。
「ウォブル」w obbl e は当時流行だった「死の競歩」。競歩とはいっても実際には走るのですから、マラソンに似ていなくもありません。
ウォブルとマラソンとの違いは、時間を競うのではなく、距離を競うところ。六日の間に、誰がいちばん長い距離を走ったのか。
ただし、あまりにも過酷な競技なので、今は行われていません。まさに、「死の競歩」なのです。
物語の『死の競歩』の場合、優勝者にはチャンピオン・ベルと、五百ポンドとが与えられることに。ピーター・ラヴゼイの『死の競歩』では、「アースカイン・チャドウイック大尉」が、538マイルを走って、優勝。
『死の競歩』には当然のことながら、1879年、英國の服装も出てきます。

「アルスター外套を着て、山高帽をかぶってそんな格好をせねばならないのに彼はやや気がひけた。」

これは、「サッカレイ」という巡査の呟き。1879年のイズリントンの警官が、ボウラーに、アルスター・コートの姿だったことが分かるでしょう。まあ、11月のことですから、当然でもあるでしょう。
1879年のイズリントンであろうとなかろうと、防寒コートとしてのアルスターは優れたものでありました。それほどに重厚かつ頑丈な「アルスター」という生地で仕立てられていたのですから。
アルスター外套があまりに重厚であるために、後に登場したのが、「アルスターレット」
ulst er ett e だったのです。やや軽量のアルスター外套。
どなたか鎧のようなアルスターを仕立てて頂けませんでしょうか。

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone