サロンとヴェラン

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サロンは、客間のことですよね。でも、今は広い意味でのサロンも少なくありません。たとえば、「ヘア・サロン」だとか。もちろん美容室のことなんですが。
さらには「文化サロン」の言い方もあります。人が多く集まる場所ということなのでしょう。
サロン salon は1699年頃から英語として用いられている言葉なんだそうです。これはイタリア語の「サローネ」salone
から出ているとのことであります。
サローネは自動車にも使われることが。まるで客間のように豪華な室内の自動車のこと。昔のメルセデス・ベンツ「600プルマン・リムジーネ」などもサルーンと呼ぶべき車だったでしょう。
これが「サロン」sarong
となりますと、おしゃれ語にも。マレー半島などの長い腰衣。三メートルくらいの一枚の布をただ腰に巻くだけで、衣裳になるのもです。
サロンは家の中だけでなく、客船にもあります。

「或時サローンに這入つたなら派出な衣裳を着た若い女が向うむきになつて洋琴を弾いてゐた。」

夏目漱石の『夢十夜』に、そのような一節が出てきます。『夢十夜』は、漱石が見た夢を小説にした物語なのです。
漱石は「サローン」と書いています。
もちろん、サロンのことでしょう。これは大きな船の中でのサロンのことになっているのですが。

サロンが出てくる小説に『アルマンス』があります。フランスの作家、スタンダールが、1827年に書いた物語。

「青年子爵オクターヴの部屋は、サロンのうえに設けられ………」

また、『アルマンス』には、こんな描写も出てきます。

「………召使が来て、英国製のヴェランで入念に包まれた分厚な書物をわたしていった。」

十九世紀までの本は、たいてい注文で特別に装丁させたものです。。
「ヴェラン」vélinは、子牛の革のこと。
どなたかヴェランの上着を仕立ててある頂けませんでしょうか。

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