プレイとプレイド

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プレイには、「演劇」の意味がありますよね。「芝居」でもあります。「プレイ・ガイド」に行くといろんな演劇の切符を売っているのは、そんなわけなのでしょう。
英国は今も昔もプレイの盛んな国であります。シェイクスピアの『ヴェニスの商人』にしても、『ハムレット』にしても、みんな芝居のために書き下ろされていること、言うまでもありません。
1954年の夏。ロンドンで芝居見物をした人物に、小川和夫がいます。小川和夫は戦前、NHKのアナウンサーだった人物。戦後は、英文学者となっています。その小川和夫がざっとひと月、英国に旅しています。その紀行文は、『ロンドン暮色』に纏められているのですが。
小川和夫はこの時の旅で、『歌は靴紐にのせて』を観ています。ロンドンの、「ロイヤル・コート劇場」で。もっとも『歌は靴は靴紐にのせて』は芝居というより、レヴューに近いものだったようですが。
小川和夫は、この英国の旅について、『徒然草』を引用しています。『徒然草』の第五十二段を。
『徒然草』第五十二段は、仁和寺のさる法師の話。さる法師、かねてから一度、岩清水にお詣りしたいものと、願っていて。ある日、とうとう念願叶って、お詣りに。でも、勝手が分からず、末社を本尊と思い違えて。吉田兼好の教訓は。
「すこしのことにも、先達はあらまほしき事なり。」
どんな小さなことでも、あらかじめ予備知識を弁えておくべきだ、ざっとそんな意味でしょうか。小川和夫は、この『徒然草』の第五十二段を引くことで、自戒しているのでしょう。
小川和夫が観た『歌は靴紐にのって』に話を戻しましょう。『ロンドン暮色』に、こんな風な書いています。

「派手な格子柄の洋服の、肩あがりで、ズボンの筋をぴんと張っているのを着て出てくれば、アメリカ人ということになっている。」

まあ、65年ほど前の話ではありますが。ここでの「格子柄」は、たぶんプレイド plaid のことかと思われます。
「プレイド」は、もともとスコットランドの民族衣裳から出た言葉。昔のスコットランド衣裳は、例のタータンを身体に纏い、最後、左胸の前で大きく結んで、留めた。この結び目の「垂れ」を、プレイドと呼んだのです。プレイドには当時、タータンがあらわれるのですから、今の「プレイド」が誕生したのです。

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