ランプは、照明器具のひとりですよね。今はたいてい電気ですが。電気のない時代には、
ランプがよく用いられたんだそうですね。
ランプ l amp はやはり西洋から伝えられたもので、ために「洋燈」の宛字もあったらしい。
燃料には多く菜種油が使われたようですね。しっかりと編んだ「芯」があって。「芯」が油を吸って、火を灯す。裸火は危ないので、ホヤで包む。
ホヤは、火屋のこと。煤で汚れたなら、洗って、掃除。それなりの面倒もあったようですが。
🎶 ランプ引き寄せ ふるさとへ……………………。
むかしの流行歌、「湖畔の宿」の一節。昭和十五年の歌。歌ったのは、高峰三枝子。
作詞は、佐藤惣之助。作曲は、服部良一。
昭和十五年頃でも、ランプを使っている宿があったんでしょうね。
「例ならばラムプを持つて昇つて来る時分だ。晩飯の支度をするので、元と呼ぶ声が聞こえる時分だ。」
尾崎紅葉が、明治二十九年に発表した『多情多恨』の一節。明治二十九年頃には、もちろんランプだったでしょう。
尾崎紅葉は、「ラムプ」と書いているのですが。
ランプが出てくる小説に、『密偵』があります。英國の作家、コンラッドが、1907年に発表した物語。
「ヴァーロック夫人はベッドの傍のテーブルに置いたランプを全開にして眠りこんでいた。」
寝室は二階にあって、二階にはガスが引いてなかった、との説明が添えられています。ここから考えられるのは。1900年頃は、主にガス燈で、ランプはやや古風だったのではないでしょうか。
ジョセフ・コンラッドの『密偵』には、こんな描写も出てきます。
「部屋と逆のほうへ向けられた警部の顔には、広幅ラシャ地の布を精しく検査しながらも……………………。」
ラシャは広くウール地を指す日本語。ポルトガル語の「ラシャ」 r ax a から来た言葉。少なくとも十七世紀には、日本語になっていたようですね。
「………おとなしやかな風采で、羅紗の角袖の外套を着て、白のふらんねるの襟巻をしめ、土耳古形の帽を冠り、毛糸の手袋を嵌め……………………。」
明治三十三年に、泉 鏡花が発表した『高野聖』に、そのような文章が出てきます。
泉 鏡花は、「羅紗」と書き、「ふらんねる」と書いているのですが。
どなたか「羅紗」と呼びたくなるような、しっかり厚手のウールのスーツ地を織って頂けませんでしょうか。