ヴィタミンは、ヴァイタミンのことですよね。
v it a m in と書いて、「ヴァイタミン」と訓むんだそうですね。でも、日本ではヴィタミンとかビタミンのほうが一般的でしょうが。
ビタミンなのかヴァイタミンなのかはさておき。健康を気遣う人にとっては、神さまに近い言葉のようですね。
「ヴィタミンCをたくさん摂っていれば風邪をひかない」だとか。「ヴィタミンEは不老長寿のもと」だとか。
もちろんヴィタミンは人に必要な栄養素なのでしょう。が、まずはふだんの食事と生活から摂取するのが佳いのかも知れません。しかし時と場合によっては栄養補助剤で補うこともあるのでしょうが。
ビタミンが出てくる小説に、『助左衛門四代記』があります。有吉佐和子が、昭和三十八年に発表した長篇。なにしろ「四代記」ですから、長篇になるのも当然でしょう。
背景は、紀州。有吉佐和子は和歌山のお生まれですから、紀州弁を駆使して生き生きとした内容になっています。
「垣内克己がビタミンAを発見して世界に名を挙げたのは、大正十三年である。」
「垣内克己」は、垣内慎吾の長男という設定になっています。そして、垣内慎吾の父が、
垣内嘉膳。つまり、垣内克己の祖父であります。そしてこの垣内嘉膳こそ、四代目の、
助左衛門。紀州の財閥であった人物。
有吉佐和子は初代助左衛門からはじまって、四代目に至るまでの歴史を連綿と語ったのが、
『助左衛門四代記』なのです。
「主な目的は銀座の壱番館で洋服や外套を作るためであった。靴は青木で、舶来品を需め、ネクタイには真珠のピンをさし、ボルサリノの帽子と、頭の天辺から足の先まで隙もなく舶来品でみづくろいし、ステッキを突いて木ノ下に帰ってきた。」
これは、垣内慎吾が七十歳くらいの頃の様子。
そして、さらに時は流れて。
「…………衿巻をしてカーディガンを着、下半身はホームスパンのズボンにコール天の色足袋をはいている垣内二郎と………………。」
「垣内二郎」は、垣内克己の弟。つまり垣内慎吾の息子なのですね。
「カーディガン」ということは、Vネックのデザインだったでしょうか。
「ゴルフからの歸りのやうに見へるVネックにプルオーバーの紳士は………………。」
横光利一が、昭和七年に発表した『寝園』に、そのような一節があります。
小説に描かれた「Vネック」としては、わりあいはやい例かも知れませんね。
それを着ると、ヴィタミンAが活発になってくれるVネック・スェーターをどなたか作って頂けませんでしょうか。