ローストとローン

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ローストは、何かを焼くことですよね。「ロースト・ビーフ」なんて言うではありませんか。牛肉の塊にじっくり火を通すこと。roast と書いて、「ロースト」。
コーヒー豆を焙煎することも、「ロースト」。ローストの仕方で珈琲の味が変わってくるのも、当然でしょう。
ローストの幅も広くて、「ロースト・チキン」や、「ロースト・ポーク」などもあるでしょう。
ロースト・ビーフの場合、牛肉の中味はピンク色と決まっています。そのために、ゆっくりと回転させながら、火を通す。昔は犬に牽かせて回転軸を回したんだそうですね。
ロンドンでロースト・ビーフとなれば今も昔も、「シンプソンズ」なんだそうですね。どの部位をどんなふうに焼くのかを、聞いてくれる店。とにかくシャーロック・ホームズも通ったというのですから、名店なのでしょう。

ロースト・ビーフがお好きだったお方に、古川ロッパがいます。

「………ニューグランドで一人食事、カレースープに、松茸と舌平目のピラフ、ローストビーフ、プディング。」

『古川ロッパ 昭和日記』に、そのように出ています。昭和十一年十月二十八日、木曜日のところに。
この食事の後、古川ロッパは、銀座の「ルパン」によっています。「ルパン」は今も当時の雰囲気を遺して、健在です。
古川ロッパは、十月二十日、火曜日には、「アラスカ」に。

「………ここのオルドヴルは二円とるが、まづくない。オニグラも、うまし。ローストチキン、スタッフドキャポン。メロンとアイスクリーム。」

そんなふうに書いています。「オニグラ」は、オニオン・グラタンのことでしょう。アラスカの「オルドヴル」が、二円。今なら二千円見当でしょうか。
それにしても古川ロッパ、健啖家だったのですね。

ロースト・チキンが出てくるミステリに、『白薔薇と鎖』があります。1991年に、ポール・ドハティが発表した物語。

「………店いちばんの上酒と、いちばん汁気たっぷりの去勢鶏のローストをあつらえた。」

また、『白薔薇と鎖』には、こんな文章も出てきます。

「襟とカフスのぐるりに刺繍のついた輝くローン地のシャツ………」

これは「金のトルコ亭」での様子として。
「ローン」lawn は、もともと麻織物。ごく薄い平織地。北フランスの「ラーン」Laon ではじめて織られたので、その名前があります。
ひと時代前には理想のハンカチ地とされたものです。
どなたか輝くローンでシャツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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